暑熱順化

~夏前に暑さへのトレーニングを~



暑熱順化とは

暑熱順化は体が暑さに適応していくことを指します。これによって体から熱を逃がす能力が向上し熱中症のリスクが低下します。
暑熱順化は大きく分けて以下の2つに分類されます。

  • 短期暑熱順化
    • 気候の季節的変動や人為的な環境調整などによって暑い環境におかれることによりそのシーズンに成立
    • 暑い環境が終わるとリセットされる。避暑地への数日の旅行など短期間でリセットされる場合もある
  • 長期暑熱順化
    • 熱帯地域など居住している地域によって遺伝的また生後に長年かけ成立
    • その人の体質となる

本ページでは短期暑熱順化について検討します。

暑熱順化のメカニズム

暑熱順化が起こる主なメカニズムとして以下が挙げられます。

  • 発汗量の増加
    • 発汗が増加することによって体外への熱の放散が増加します。
      • その機序として、より低い深部体温で発汗が開始することが指摘されています。
    • その一方で、汗に含まれるナトリウムの濃度が低下します。ナトリウムがより体内に保たれることによって体内に水分を維持しやすくもなります
  • 血流増加、皮膚の毛細血管拡張
    • 外気に近い皮膚の毛細血管により多くの血液が流れることにより、体外との熱交換が促進されます。

暑熱順化を行う時期

我が国においては4月中旬~6月上旬に暑熱順化がなされることが望まれます。最も適切な時期は居住地の気候によります。
具体的な時期に関しては日本気象協会が発表している暑熱順化前線も参考にしてください。

熱中症ゼロへ 暑熱順化前線:https://www.netsuzero.jp/le15-zensen

もちろん、推奨されている時期より遅くなっても暑熱順化は可能です。気温の上昇に体の適応が追いつくことが重要ですので本格的な夏を迎える前に体を慣らしておくといいでしょう。

暑熱順化の主な方法

  • 30分程度の軽い運動(ウォーキングやストレッチなど)
  • 2日に1回以上の入浴

暑熱順化には数日から2週間程度を要します。十分な効果をより確実に得るためには2週間の取り組みが理想的です。

注意点

運動にあたって「体のどこかが痛い」「怪我をしている」「肥満のため運動によって足腰を傷める恐れがある」等の問題がある場合は、治療を受ける・治癒を待つ、患部の運動や負荷を伴わない運動を行う等、症状が悪化しない・治癒を遅らせないよう注意して方法を決めてください。運動を行わず入浴による暑熱順化を図ることも選択肢に上ります。

また心臓や肺、腎臓などの基礎疾患ほか持病がある場合、薬を内服している(特に、血中濃度の測定を定期的に行う必要がある薬)場合などは暑熱順化の可否や方法についてかかりつけ医と事前に相談するといいでしょう。

参考文献

1) LIND, A. R., & BASS, D. E. (1963). Optimal exposure time for development of acclimatization to heat. Federation proceedings22, 704–708.
2) 中村泰人, 岡本孝美, & 安浪夕佳. (2009). 日常生活で生じる暑熱適応の人工気候室実験による実態把握. 日本建築学会環境系論文集74(636), 115-124.