外発的動機づけと内発的動機づけ

2021年7月19日作成

生徒様の学力を伸ばすためには行動を学習に向かわせていく必要があり、そのためには適切な動機づけが欠かせません。本ページでは、教育機関様で動機づけをどのように行っていくべきかを検討します。



外発的動機づけと内発的動機づけ

外発的動機づけは、報酬や罰、強制などの外的要因によって形成される動機づけです。
動機づけを形成する手段を周囲が容易に得ることができ、かつ短期のうちに動機を強めることができるという利点を有します。
一方で、外的要因に対する慣れによって周囲の働きかけによる効力が薄れやすい、後述する内発的動機づけと比較して効力が弱いという欠点があります。
ほか内発的動機づけに対しては、既に成立している内発的動機づけを打ち消すアンダーマイニング効果、内発的動機づけを新たに発生させるエンハンシング効果という効果をもたらすことがあります。

一方、内発的動機づけは、好奇心や関心など内面からもたらされる動機づけです。
自発的に生じる動機づけであるため、外発的動機づけと比べて効力が強く、より高い成果も期待することができます。
その一方で、他者が少なくとも直接的には呼び起こすことができない、短期的な効力が期待しにくいことが欠点として挙げられます。
内発的動機づけを構成する動機は大まかに、感性動機(刺激を得られる)、好奇動機(適度な新規性をもつ物事に触れられる)、活動性動機・操作動機(体を動かす・物事を動かす)、認知動機(外界の情報を整理できる)と分類することができます。

外発的動機づけと内発的動機づけを比較すると以下のようになります。

外発的内発的
起源外的刺激
報酬、罰、強制など
内面
好奇心、関心など
即効性高い低い
持続性低い高い
形成容易困難
効果低い高い

このほか、外発的動機づけは内発的動機づけを打ち消す(アンダーマイニング効果)、もしくは引き起こす要因となる(エンハンシング効果)ことが指摘されます。

アンダーマイニング効果とエンハンシング効果

アンダーマイニング効果

アンダーマイニング効果は、内発的動機づけが既に生じている人に対して外発的動機づけの因子となる外的要因を与えることによって前者を打ち消してしまう作用を指します。


もともと理科が好きだった子供に対して理科の勉強をしていることへの”ごほうび”として小遣を増やした結果、小遣が増えないと理科の勉強をしないようになった

既に動機づけが確立されている場合は、他者が動機を更に強めようと策を弄することが逆効果になる恐れがあります。

エンハンシング効果

エンハンシング効果は、外発的動機づけが内発的動機づけを引き起こすことを指します。
外発的動機づけによって学習などの行動に取り組んでいく過程において取り組んでいる物事そのものへの興味を強めていくこともありますし、周囲が取り組みに対してフィードバックを与えることによって内発的動機づけの発生が促されることもあります。
後者の例としては、取り組みを褒めること、目標を達成させること等が挙げられます。これらは同時に外発的動機づけ自体を強めることにも繋がります。

外部からのアプローチ

(基本)外発的動機づけ→内発的動機づけ

内発的動機づけを確立させることが最も良いことは間違いありません。ただし、内発的動機づけが自然に成立することはそうそう期待することができないため、まずは外発的動機づけによって学習等への取り組みを強め、その中でエンハンシング効果によって内発的動機づけが成立することを待つ、同時に”ほめる”等のアプローチによってエンハンシング効果の出現を促すことが一般的には最も良い使い分けだと思われます。
その一方で、既に内発的動機づけが成立している場合は外発的動機づけがアンダーマイニング効果によって前者を打ち消してしまう恐れがあるため注意が必要です。

教育機関様での活用

教育機関様では、“学習への取り組みをほめる””達成しやすい目標を与えていく”等の取り組みによって生徒様の外発的動機づけを生じさせると同時に内発的動機づけが成立する確率を高めていくことが有効になると思われます。

まとめ

  • 外発的動機づけは外部からのアプローチによって成立させやすい
  • 内発的動機づけは効力が強い
  • 外発的動機づけ→内発的動機づけという進展を図る
  • 内発的動機づけが既に成立している場合は外的刺激を与えない
  • “ほめる””達成しやすい目標を与える”等のアプローチが有効

補足:結果の叱責は禁忌。過程に着目する

結果を叱責することは、ごく短期間のみ結果の改善をもたらす可能性がありますが、その後は結果を更に悪化させる危険があります。結果について論じる際は、専ら「今後の結果をどう良いものにするか」を検討する材料とした方が良いでしょう。
またこれまでの研究では、結果をほめることはその後の結果を改善する効果をもたらすものの、過程をほめることと比べて困難な課題に挑むことを促す力が弱いという結果が出ています。
後になって変えようのない結果に拘泥して指導するよりも、今後の結果を改善することに繋がっていく取り組みに着目し褒めていく方が建設的です。