2021年8月10日作成
片頭痛は発作性頭痛の一種で、頭痛のほか視覚異常などの様々な随伴症状を呈する厄介な疾患の一つです。受験期の学習を阻害するだけでなく、入試本番に発作が起きた場合には不合格に繋がる危険性があるため、入試まで十分な期間がある時期に対策をとる必要があります。
片頭痛とは
片頭痛は、一次性頭痛(他の原因疾患がない頭痛)の一種であり、発作性の頭痛が様々な随伴症状と共に引き起こされる疾患です。
頭痛発作は4時間以上におよび、人によっては3日間も継続することがあります。
頭痛に伴って、視覚異常(視界の一部にチラチラしたものが入る”閃輝暗点”など。頭痛発作の前に現れることが多い)、吐き気や嘔吐などの多様な症状が現れることが特徴の一つです。
光や音、体の動き等によって痛みが強くなるため、外界からの刺激の多くは痛みを強くする要因となります。
受験世代の有病率
これまでの調査では、片頭痛の有病率は高校生で9.8%、中学生で4.8%という結果が出ています。このことから受験を控えている世代では珍しくない疾患の一つだということができます。また片頭痛は小学生にもよくみられます。
しかしながら症状の軽重には個人差があり、軽かったとしても受験勉強の妨げになることや入試本番で実力を発揮することができなくなる原因となることは間違いがないため早くからの対策が必要となります。
片頭痛に関連する因子
発作を誘発する因子
片頭痛発作は周期的に起こる場合もある一方で特定の因子が引き金となることもあります。片頭痛を誘発する主な因子として以下が挙げられます。
- 精神的因子
- ストレス
- ストレスからの解放が因子となる場合もある
- 精神的緊張
- 疲れ
- 睡眠の過不足
- ストレス
- 内因性因子
- 月経周期など
- 環境因子
- 天候の変化
- 温度差
- 頻回の旅行
- 臭い
- 食事性因子
- 空腹
- アルコール
また、ピルの使用が症状の悪化に繋がる可能性があると考えられています。
共存症
片頭痛と共にみられることが多い疾患には以下のようなものがあります。
これらを改善することによって片頭痛も改善する可能性があります。
改善すべき外的要因
以下も改善によって片頭痛を軽減することができる可能性があります。
片頭痛の治療
片頭痛の治療として以下が挙げられます。将来受験を控えている場合は十分な時間の余裕をもって予防療法が開始されることが好ましいと思われます。
- 発作時
- 鎮痛薬(アセトアミノフェン等)
- トリプタン(痛み始めた時に使用する。タイミングを逃すと効かなくなる可能性がある)
- 試験中に頭痛が起こる恐れがあるため、入試当日は薬とペットボトル(ラベルは剥がして文字が一切残らない状態にしてください)を携行すると良いでしょう
- 吐き気止め
- その他の対症療法
- 予防のための治療
- ロメリジン、バルプロ酸などによる薬物療法
- 効果判定には最低2ヶ月、通常3ヶ月程度を要する
- このほか、ガルカネズマブなど数種類の新しい抗体医薬が我が国で承認を受けています
- ロメリジン、バルプロ酸などによる薬物療法
教育機関様での対応
受験生の合否に大きな影響を与えうる疾患であること、予防治療の効果判定に一定の期間を要することから、面談等によって早期から頭痛の有無を尋ね、頭痛を抱えている場合は可能な限り早期、遅くとも受験の1年前には神経内科での受療を促すと良いと思われます。もちろん受験が近い時期まで未受診だった場合も、治療によって片頭痛による不合格のリスクを減らすことができる可能性があるため速やかな受診を促してください。また日頃から、片頭痛に限らず心身の不調がある場合には早期の受診を促すと良いでしょう。
ほか、睡眠など生活習慣の改善を指導することもリスクの軽減に寄与する可能性があります。
試験会場における照明や雑音が発作時に症状を増悪させる因子となることから、片頭痛をもつ生徒様に対しては、試験の出願にあたって受験上の配慮を申請するよう指導することが望ましいと思われます。
(参考:障害や病気に対する受験上の配慮)
参考文献
日本神経学会・日本頭痛学会(2013) 『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』医学書院