2023年12月29日作成
ノロウイルス感染症は、受験シーズンとなる冬季に流行しやすい感染性疾患の一つです。
罹患した場合、当日に受験を禁止される可能性があるほか、下痢や嘔吐等の症状により試験への集中が著しく低下する・試験中の頻繁な離席を余儀なくされる恐れがあるため他の感染症と共に十分な対策が求められます。
本ページでは、ノロウイルス感染症の予防に焦点を当てて対策を検討します。
ノロウイルス感染症とは
ノロウイルス感染症は、受験シーズンとなる冬季に流行しやすい感染性疾患です。
一部の学校ではノロウイルスを含む感染症等に罹患している場合の受験を禁止しているため、入試当日に感染・発症していた場合は受験そのものを受けられなくなる恐れがあります。
そうでなくても、下痢や嘔吐等の症状により、入試本番に発症していた場合は試験への集中を著しく低下させるばかりか試験中の頻繁な離席を余儀なくされ試験時間を浪費する、また試験会場への移動が妨げられる恐れがあります。
また入試直前に発症していた場合も、試験会場や宿泊地への移動に支障を来す恐れがあります。
ノロウイルスへの感染は、入試において本来なら合格に十分な学力を有する受験生にも不合格をもたらす可能性があり十分な対策が求められます。
感染経路
通常は経口感染。飛沫感染もある(参考文献1を参照)
感染様式
患者の糞便や吐物から手を介してウイルスが口に入る
飛沫を通した人から人への感染
ノロウイルスが付着した手で触れられた食品の摂取
ノロウイルスに汚染された二枚貝や水などの摂取
潜伏期間
24-48時間程度
発症期間
通常は1週間以内。最初の1-2日間程度がピーク
主な症状
吐気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱(通常は軽度)
受験への影響
一部の学校では罹患時における受験の禁止が定められている
症状による集中の著しい低下
試験中の頻繁な離席
自宅と試験会場、試験会場同士などの間での移動に支障を来す
感染対策
受験シーズンに罹患しうる感染症はノロウイルス感染症以外にも様々なものが存在するため幅の広い対策が求められます。
一般的な感染対策
手洗い、うがい、マスク着用
トイレの清掃(次亜塩素酸水を用いる)
*次亜塩素酸水は十分な換気が行われている環境で物に対して用いてください。吸引した場合に嘔吐等の症状を引き起こす恐れがあるほか、濃度の高い次亜塩素酸水を手指消毒に用いた場合に肌を傷める原因となる可能性があります
教育機関様での予防対策
ドアノブや手すり、椅子・机、蛇口、便座など多数の生徒様が触れる可能性のある箇所を次亜塩素酸でこまめに消毒することが有効です。
また、御家庭での感染対策の呼びかけや職員様の感染予防も重要となります。
職員様・生徒様共に感染時は無理をせずに休める風潮をできる限り作っておくことも望まれます。
御家庭での予防対策
御家族が触れることの多い、ドアノブや便座、蛇口などを次亜塩素酸でこまめに消毒することが有効です。
またタオルは御家族ひとりひとり別のものを用いるなど、複数の御家族が触れるもの自体をできるだけ減らすことが重要です。
入浴にあたっては、御家族の中で下痢等の症状がある方は最後に入浴するといいでしょう。受験生は、体の症状や感染者との接触、感染源に触れた等、「他の御家族を感染させる恐れがある」等の場合を除いては湯を立ててから最初に入るようにするといいでしょう。
トイレの使用時はフタを閉めてから水を流すようにしましょう。
他の感染症への罹患も含めて対策する必要もあるため、家庭内でもマスクを着用しておけばより安全です。
また受験が近い時期には食事の際に他の御家族とテーブルを共にしない等の対策も検討に上ります。
生徒様の予防対策
他の感染症にも同時に対策するため、手洗いやうがい、マスク着用などを徹底しましょう。
トイレの使用時はフタを閉めてから水を流すようにしましょう。
また多くの人が触れるものに必要なく触れないようにするほか、勉強の妨げにならない範囲で次亜塩素酸を使って身の回りの消毒をするといいでしょう。
罹患時の治療と対応
対症療法のみ(ノロウイルスに対して有効な抗ウイルス薬は存在しない)
水分や栄養の補給。飲料としては経口補水液が好ましい。その他スポーツドリンクなど
症状が重い場合は医療機関にて点滴による補液を受けることが必要となる場合もあります。
特に食事や水分の摂取ができなくなった場合は早期の受診が必要です。
参考文献
1) Ghosh S et al.: Enteric viruses replicate in salivary glands and infect through saliva, Nature. 2022 Jun 29;1-6. doi: 10.1038/s41586-022-04895-8. Online ahead of print.